高血圧治療の目標数値を下げてはダメ!高齢者や腎臓病の人は危険!
高血圧治療は「最高血圧120未満を目標にすべきだ」という研究報告が
米国立心肺血液研究所によって発表されたそうです。(2015年11月9日)
その元になった研究について考えてみました。
この記事の目次
◆米国立心肺血液研究所の研究報告
米国立心肺血液研究所の研究は、50歳以上で血圧が高く、心筋梗塞などのリスクのある約9400人を対象に、
血圧を「120未満」に下げる患者と、「140未満」に下げる患者の2群に分け、
平均で3年余り追跡し、比較した結果、
「120未満」にした患者の方が心不全や心筋梗塞、脳卒中などの発症率が低く、死亡リスクが27%低かったとのことです。
そこで研究チームは「今後の治療指針の改定などで参考にすべき結果」
として報告したのです。
※これは本当に驚きで危険だと思われます。
米国立心肺血液研究所のちゃんとした研究機関の研究ですから、うそでは
ないのでしょうが、大丈夫でしょうか。
高血圧治療の目標値を最高血圧「120未満」にしてしまったら、日本の高齢者はほとんど全員が病人ということになってしまいます。
脳外科の看護師だったとき、高血圧を治療しようと病院を受診して
血圧降下剤を処方されたとたん脳梗塞を発症して入院した患者さんを何人
も見ています。
高齢者は動脈硬化もすすみ、血液の流れもスムーズに行かなくなり、自然現象で血圧が高くなっているのです。
それを無理に下げることは、脳に行く血流が減って脳梗塞に直結するのは当然だと思われます。そこのところはどうなのでしょう。
◆腎臓障害の危険性
また、この研究結果では、急性腎障害などの発生率は120未満の人が4.1%と、
140未満の2.5%より高くなっています。
腎臓の血流が減りすぎて障害が起きた可能性があります。
最高血圧を120未満まで下げると、心疾患などの発症率が減り、死亡リスクが27%低くなったといいますが、腎臓障害のリスクは高くなるのです。
一律に120未満に下げるのは危険だと思われます。
◆研究対象者が体格指数(BMI)約30は問題
米国の研究参加者は体格指数(BMI)が約30で、肥満だったのが問題かも知れません。
BMIの正常値は18.5~25未満とされていて、日本人ではBMI30以上の肥満の人は全体の3%しかいないのに対して、アメリカ人はBMI30以上の人は全体の30%です。
肥満の人は心疾患での死亡リスクが高いので、血圧を下げることで死亡リスクが下がったと思われます。
しかし日本人は肥満の人が世界でも少ない(154位)方です。
高齢者にはやせている人が多いですから、無理に血圧を下げたら脳梗塞や腎臓障害の危険が増えるのではないでしょうか。
また高齢者は、血圧を下げすぎると転倒・骨折を招く恐れもあるのです。
BMI:Body Mass Index =体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算した値。
◆日本高血圧学会の指針
高血圧治療の目標値は近年世界的に緩和されてきていました。
糖尿病を持つ高血圧患者を対象とした北米の研究など数千人規模の大規模試験で、血圧を厳しく下げても、心臓病などによる死亡率の減少につながらないとの研究報告もあったためだそうです。
※今回の研究結果とは真逆な結果ですね。
糖尿病患者に限った点が違いますが。
そこで日本高血圧学会が2014年に改定した治療指針は、欧米の高血圧学会の流れに合わせて
- 高血圧の主な治療目標
- 75歳未満 140/90未満
75歳以上 150/90未満
糖尿病患者と慢性腎臓病患者 130/80未満
と定められ、若年者・中年者の治療目標は、従来の「130未満」から「140未満」に緩和されたばかりです。
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◆日本の高血圧学会は現行の140未満で
今回の米国立心肺血液研究所の報告で日本の医療現場は混乱しているようですが、
日本高血圧学会の治療指針作成委員長を務めた島本和明・札幌医大学長は
「様々な大規模調査を併せて解析するなど、さらなる検討が必要」と話し、現場の医師に対して
「現在の指針を目安に治療にあたってほしい」と強調したそうです。
※確かに、米国の研究がそのまま日本人の身体に合うわけではないので、さらなる研究や検討が必要だと思われます。
島本和明氏の著書はこちら⇓⇓
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日本人間ドック学会が昨年(2014年)、健康な人の基準案として最高血圧の上限を「147」と発表し、 話題を呼びました。
健康な人の最高血圧が147ならば、治療の目標値も147で良いのではないかと思っていましたが、 日本高血圧学会が猛反対して、目標値が緩和されることにはなりませんでした。
これ以上緩和しては利益が減って経営が成り立たないと反対しているのかと思いましたが 今回は立派でした。
目標値を120未満に下げたりしたら、中年以上の人はほとんどが病人になり、医療保険制度が 成り立たなくなるのではないかと心配です。当分は現行のままで良かったです。
◆まとめ
米国立心肺血液研究所が最高血圧を120未満にするべきだという研究発表をしましたが、その研究に参加したのは肥満の人(BMI30以上)たちだったので、日本人には合わない研究だと思いました。
血圧を下げ過ぎると腎臓障害や脳梗塞の危険があり、高齢者は転倒や骨折をしやすくなってしまいます。
日本高血圧学会が現行の140未満(75歳未満)を勧めているのは適性だと思われます。
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