亜鉛欠乏症や肝硬変に朗報!日本初追加承認された[低亜鉛血症]治療薬

ウィルソン病治療薬(銅吸収阻害薬)であるmedicine_capsule.png薬
ノベルジン(一般名酢酸亜鉛水和物)の効能・効果
に、「低亜鉛血症」が追加承認されました。

これにより、亜鉛欠乏症による味覚障害や肝硬変
など亜鉛不足が原因と考えられる病気にノベルジン
が保険で使用できることになりました。

この適応を持つ薬剤が日本国内では初めてとのこと
でびっくりしました。

亜鉛欠乏症では味覚障害が有名ですが、今までは
味覚障害で医療機関にかかっても、サプリメント
が処方されるか、

他に亜鉛を含む薬剤があっても適応が承認されて
いないので、保険がつかえなかったのだそうです。

知りませんでした。。

改めて亜鉛や薬剤について調べてみます。

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◆ウィルソン病治療薬(銅吸収阻害薬)がなぜ亜鉛補給に?

❖ウィルソン病とは

ウィルソン病とは、日本では出生3万~4万人に1人の割合で発症
する遺伝性(先天性)銅代謝異常症で、難病171に指定されています。

常染色体劣性遺伝で、胆汁中への銅の排泄がうまくできず、銅が
肝臓・腎臓・脳・眼などに多量に蓄積し、様々な障害を起こします。

多量に蓄積したCu(銅)により、小児期に重い肝障害(肝炎・肝硬変)
を起こしたり、震えや言語障害などの中枢神経障害を起こす重篤な
病気です。 小児期の慢性肝疾患としては最も頻度が高い病気です。

ウィルソン病という病名は、1912年にウィルソン博士が初めて報告
したので、博士の名前から名付けられました。

❖ウィルソン病の治療法は?

ウィルソン病は銅が蓄積する病気ですので、銅と結合して排泄する
Cu結合薬(Cuキレート剤)と、食事中の銅の吸収を妨げる銅吸収阻害
薬(亜鉛薬)の2種類を使用して治療します。

これらの薬は生涯服用し続けなければなりませんが、ウィルソン病
は難病の中でも治療可能な数少ない病気の1つです。

※ウィルソン病の治療薬ノベルジンは一般名が酢酸亜鉛水和物と言わ
れるように亜鉛を含んでいるので、この亜鉛が亜鉛欠乏症の亜鉛の
補給に役立つことがわかりました。

しかし多量に服用すると、今度は銅が足りなくなりますので注意が
必要です。人間の身体は微妙なバランスでできているのですね。

◆亜鉛の役割

亜鉛は体内の300種類以上の酵素の構成要素で、タンパク質の合成や
代謝など生命を維持する大切な役割を担っているのです。

体内の亜鉛が不足すると、味覚異常、食欲不振、皮膚炎、貧血、脱毛、
さらに発育障害など様々な症状が現れます。

低亜鉛を示す基礎疾患として慢性肝疾患、糖尿病が報告されている
そうです。

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◆亜鉛と肝疾患との関係

今日のヤフーニュースで、低亜鉛血症の国内初の薬の登場に関して

注目集まる「亜鉛」がこれからの肝硬変治療を変えるのか
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170523-00000017-nkgendai-hlth
日刊ゲンダイDIGITAL 5/23(火) 9:26配信

という記事が載っていました。

この記事の中で、大阪国際がんセンター副院長・臨床研究センター
長の片山和宏医師が、特に注目するのは、亜鉛と肝疾患との関係
と述べておられます。

肝疾患は、肝臓に炎症が起こる「慢性肝炎」からはじまり、線維化
が進行した「肝硬変」に移行します。

するとタンパク・エネルギーの代謝異常が起こって肝機能低下
(肝不全)に陥り、がんなど諸症状が表れ、重症になれば死亡
してしまいます。

❖問題はタンパク質の代謝の異常

生きていく上で欠かせないホルモンなどが各臓器で合成されています
が、その合成に必要な材料を供給しているのが肝臓です。

肝臓では、タンパク質が合成される過程で有毒なアンモニアが発生
しますが、正常であれば尿素回路という酵素群で無毒化されます。

ところが、この尿素回路は亜鉛が欠乏するとアンモニアが処理でき
なくなり、アンモニアが血中で増えると、結果的にタンパク質を
合成する能力(タンパク代謝)が低下してしまうのです。

この状態になると
タンパク代謝の異常を示す、アルブミン値が低くなり
3.5g/dlを下回ると生命予後が著しく悪くなるのだそうです。

これはつまり亜鉛欠乏をも示していることがわかります。

❖肝機能低下と亜鉛欠乏の密接な関係を示す臨床試験

片山和宏医師は、肝機能低下と亜鉛欠乏は密接な関係にあり、
もっと亜鉛を用いた治療を推奨するために、臨床試験を
行いました。

●試験方法

高アンモニア血症と低亜鉛血症がある肝硬変患者18人を対象に、
「亜鉛投与群」と「プラセボ(偽薬)投与群」に分け、3カ月間調
べました。

●試験結果

亜鉛投与群では亜鉛の血中濃度は上がり、アンモニアの値は30%
低下したのです。

また、年単位で「長期投与群」と「そうでない人」を比較すると、
血中亜鉛濃度80μg/dl以上を維持した例では、肝臓がんの発症
が有意に少なく、亜鉛濃度が低ければがんの再発が多かったとのこと。

さらに動物実験でしたが、亜鉛投与によって肝臓の線維化も抑制され
たのです。

「これらの結果から、低亜鉛血症のある肝硬変は亜鉛補充療法を
考慮すべきだと考えられます」とおっしゃいます。

これはすばらしい結果ですね。肝硬変はがんになるのがとても心配
ですが、がんの発症や再発も少なくなるとはびっくりです。
肝臓疾患をお持ちの方は主治医と亜鉛補充治療についてご相談して
みるべきですね。
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◆まとめ

いままで亜鉛欠乏症の保険薬が無かったと知って驚きました。

ノーベルファーマ株式会社が、2008年に、銅の蓄積を排除するため
に亜鉛を使用した「ウィルソン病」治療薬を市場に出しました。

その後、現場の医師や研究者の間で、低亜鉛血症にも効能があるとの
報告を得たため、臨床試験を追加し「低亜鉛血症」に関する効能
・効果を追加して承認を取得し、保険適用を受けることができたのです。

ノーベルファーマ株式会社はアンメット二ーズ医薬品開発に取り組
んできたすばらしい日本の会社です。

アンメットニーズ医薬品とはいまだに治療法がみつかっていない
疾患に効く治療薬のことです。

難病に効く医薬品などは開発がむずかしく、必要とする患者さんの
数も少ないため、利益があまりのぞめないことから、大製薬会社は
あまり手をつけないようです。

それをあえて、希少疾患の治療薬をこの手で患者に届けたいという
思いが募りノーベルファーマ株式会社を設立したという、塩村仁
社長(62)の心意気と手腕に涙、涙です。

この薬が多くの人々を救うことは間違いありません。
これからもノーベルファーマ株式会社に頑張っていただきたいと
思います。

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