iPS細胞使った心不全治療の臨床研究を来年開始!実用化は5年後に

roujin_sinzouhossa.png心筋梗塞大阪大学の澤芳樹(さわ・よしき)教授の研究
グループが、ips細胞を使って重症の心臓病患者
を治療する世界初の臨床研究を、来年の前半にも
始めると発表しました。

「心筋シート」を作って心臓に貼り付けて、機能
を回復させると言うのですが、数年前にこの研究
の臨床試験は終わって実用化したと筆者は思って
いました。

不思議に思い調べてみると、どうやらこのシート
は以前のシートとは違うようです。

二つのシートの違いについて勉強したことを
お知らせします。

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◆以前の心臓シートは「筋芽細胞シート」

2016年5月から保険診療が始まったのは、患者の脚(ふくらはぎ)
の筋肉から採取した細胞を培養してシート状にしたものを心臓患部
に貼りつけるという治療法です。

脚の筋肉には「筋芽細胞(増殖して筋肉になる細胞)」があり、
肉離れなどを起こすと、サイトカインというタンパク質をたくさん
出して2週間程度で肉離れを元通りに治癒する働きをします。

このサイトカインを心臓の筋肉にも働かせて、心不全の治療を
することを考えたのが澤芳樹教授です。
まず、患者さん本人の脚のふくらはぎの筋芽細胞を採取培養して
筋芽細胞シートを作り、患者さんの心臓の患部に貼り付けます。

すると筋芽細胞シートから出るサイトカインが心臓の筋肉に働い
て、心臓を元気にし、症状が改善して、生存率も向上します。

このシートは再生医療製品「ハートシート」として2016年5月から
実用化されています。

❖「筋芽細胞シート」治療法にかかる費用

この治療は、保険なしだと1476万円もかかりますが、健康保険が
適用になったので、3割負担の場合、443万円です。

これに高額医療制度の適用を受ければ、およそ月々23万円で治療
を受けられるようになりました。それでも高額ですね。

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◆今回の心臓シートは「心筋シート」

以前の筋芽細胞シート(ハートシート)は、あくまでふくらはぎ
の筋肉であり、心臓の筋肉の代わりになるものではありません。

そのため、心臓の筋肉がだめになった重症患者さんには、効果が
ない場合もあり、サイトカイン療法には限界があるのです。

それで、iPS細胞を利用する治療法が研究されたことが分かりました。

❖他人由来のips細胞で「心筋シート」作成

今回のシートは、拒絶反応の少ない他人由来のips細胞を、
心臓の筋肉の細胞に変化させて、シート状に加工した
「心筋シート」を機能が衰えた患者さんの心臓に貼り付けて、
だめになった患者さんの心臓の筋肉の代わりをさせようというのです。

豚を使った動物実験では効果が確認されていて、近く厚生労働省
に申請して、その心筋シートの安全性と効果を確かめるために
来年(2018年)の前半には人に対して1例目の手術を行う予定
とのこと。

ips細胞を使った心臓病の治療は世界で初めてです。

患者自身の細胞を培養する筋芽細胞と違い、今回の治療法では
iPS細胞から十分な量の心筋シートを前もって準備しておける
ので、よりスピーディな治療ができると考えられています。
この治療法が完成すれば、人口心臓も心臓移植も必要がない時代
が来るかも知れませんね。

❖心筋シート治療法にかかる費用は

まだ未定ですが、患者さん自身のips細胞を使う場合に比べて
作製時間や、費用は抑えられると言われています。

◆まとめ

まず、「筋芽細胞シート」と「心筋シート」の違いについて
勉強しました。

「筋芽細胞シート」は患者さん自身の脚のふくらはぎの筋芽
細胞を培養して作るシートで、筋芽細胞が出すサイトカイン
で心臓を元気にするものです。

「心筋シート」は、他人のiPS細胞を心臓の筋肉に変化させて
心臓の筋肉の代わりにするというものです。

iPS細胞は、今や、人間の身体のすべてで応用する研究が進んで
いますが、命のかなめの心臓に応用できるのはすばらしいですね。

重症の心不全の患者さんは、今まで人口心臓や心臓移植しか方法
がなかったのですが、iPS細胞の心筋シートによって、多くの患者
さんの命が救われることになるでしょう。

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