PD-1阻害薬オプジーボ+ミトコンドリア活性化薬の肺がん治験開始
つい先日、光免疫療法や、ウィルスの殻で体内抗体
を作るがん治療ワクチンなど、がん免疫療法の
進歩が話題になっていましたが、
今日のニュース(2017年1月17日)で、また
もやがん免疫療法の話題がでました。
現在がん免疫療法の主流になっている、オプジ
ーボ・ニボルマブ(PD-1阻害薬)とミトコンドリア
活性化薬を併用すると、オプジーボの効果が増強されて
今までオプジーボの効果がみられなかった患者にも効果が期待されるというのです。
2017年度にも臨床試験(治験)が始まるとというこの免疫療法について学んだこと調べたことなどをまとめます。
この記事の目次
◆PD-1阻害薬オプジーボ・ニボルマブとは
❖PD-1分子とは
正常な細胞から変化したがん細胞は、普通は人間の免疫細胞
(キラーT細胞)によって食べられ消滅するのですが、
がん細胞は増殖して生きのびるために、免疫細胞をじゃまするPD-1
分子をまわりに集めて、免疫細胞のじゃまをしようとするのです。
がん細胞はキラーT細胞にある分子「PD―1」に別の分子「PD―L1」
を結合させ、攻撃にブレーキをかけてしまうのです。
PD-1分子は本来免疫細胞が過剰に働くのを阻止する役目を担っている
のですが、がん細胞に悪用されてしまうわけです。
❖オプジーボ(一般名・ニボルマブ)とは
このブレーキのメカニズムを発見した京都大学の本庶佑博士が、
このPD-1ブレーキを解除すれば、免疫細胞のキラーT細胞が攻撃を
始めてがん細胞を食べると考えて、開発したのがオプジーボです。
オプジーボは進行したがんでも効果を示す報告がありますが、効か
ない患者もいると言われています。
値段が高いことでも有名ですね。近いうちに値下げされるようですが。
日本での販売元は小野薬品工業株式会社で、現在は、皮膚ガン、
一部の肺がんや腎細胞がんでの治療薬として保険適用が認可
されています。
世界では現在57カ国以上で承認されているそうです。
❖日本人の発明なのに特許権は米国に
オプジーボ(ニボルマブ)は京都大学医学部の本庶佑博士
の研究チームが発明したと言われていますが、
資金が莫大にかかるせいか、「日本の製薬会社で引き受ける
所がなかった」そうです。
そのため、米国のベンチャー企業製薬会社ブリストル・
マイヤーズ社と契約したので、特許権は米国にあるとのことです。
ちょっと残念ですね。こういうことが多々あります。
光免疫療法やがん治療ワクチンも、日本人の発明なのに、米国の
特許になりますから。
今回のPD-1阻害薬オプジーボ+ミトコンドリア活性化薬も
京都大学医学部の本庶佑博士の研究チームによるものなんです。
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◆ミトコンドリア活性化薬を併用する理由
❖ミトコンドリアとは
ミトコンドリアとは、細胞の中にあり、呼吸とエネルギー生成を
担う重要な器官です。独自のDNA(遺伝子)を持ち、子どもには
母のミトコンドリアが受け継がれ、父からは遺伝しません。
高校の生物の教科書に出ていた形が目に浮かびますね。
最近はミトコンドリアで若返るとサプリの宣伝もさかんです。
❖マウスの実験で分かったこと
本庶氏らは、PD―1をなくしたマウスではキラーT細胞内のミトコン
ドリアが活性化することを発見し
大腸がんのマウスで実験した結果、活性化したミトコンドリアが
活性酸素を発生して、キラーT細胞が増殖することが分かりました。
そこで、活性酸素を発生させる薬剤をオプジーボと同時に投与する
とオプジーボ単独よりも効果が上がったのです
さらに、市販の安価な高脂血症剤「ベザフィブラート」が活性酸素
発生剤として使えることも分かりました。
❖ミトコンドリア活性化薬を併用すると
マウスの実験により、ミトコンドリア活性化薬をオプジーボと併用
すると、活性化されたミトコンドリアが活性酸素を発生し、免役
細胞であるキラーT細胞が増殖して、がん細胞をやっつけるので
オプジーボだけのときより効果が増すということです。
◆オプジーボ+ベザフィブラートの肺がん治験開始について
今回の研究は、高価なオプジーボを減らす方法として、またオプジ
ーボが効かない患者さんを救う方法として着目されています。
また、ミトコンドリア活性化薬として使用される「ベザフィブラート」
はすでに高脂血症剤として安価な市販薬として販売されているもの
ですから、すぐに治験が始められることでしょう。
個々の薬剤の安全性は確認されているわけですから、効果があれば
すぐに実用になると期待されます。
光免疫療法や、がん治療ワクチンなどが適用されるのは早くても
5~6年後ですから、それまでの繋ぎとしておおいに活躍できると
思われます。
臨床試験(治験)は2017年度から、京大と九州大、先端医療振興財団
(神戸市)が共同で実施するそうです。
◆まとめ
がん免疫治療薬のPD-1阻害薬オプジーボとミトコンドリア活性化薬
を併用する免疫療法は、
ミトコンドリアを活性化すると、活性酸素が産出され、それにより
免疫細胞であるキラーT細胞が増殖してより多くのがんを攻撃する
ことがわかりました。
治験が1217年度から、まず肺がんについて実施されます。
余談ですが、この研究のマウスの実験で、がん細胞付近のリンパ節を
切除すると、キラーT細胞の効果が消えたそうです。
がん患者は転移を防ぐためリンパ節を切除する場合が多いのですが、
研究グループは免疫治療に有害な可能性があると指摘しています。
どうやらリンパ節は切除しないほうが良いようです。
またミトコンドリア活性化によって活性酸素が発生するのも心配です。
活性酸素は細胞を傷つけ、がんの元になると言われていますから。
色々なことが早く解決されることを祈るのみです。
(ソース:時事通信 1/17(火) 5:09配信)
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